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静かな時

野村尚之

野村polaris01


静かな時



故郷の記憶はいいもんばかりではない。
若かった頃は、何も無い町が、好きではなかった。
故郷を離れてから、あまり帰郷していない。
してもせいぜい一泊するくらいで、逃げるように東京に戻ってくる。
故郷を離れて20年、以前にも増して何も無くなった町を撮ってみようかと思ったのは、
町が変わったからではなく、僕自身が変わったからだろう。
故郷に対する懐かしさや感傷ではなく、ましてや憎しみや嫌悪でもなく、
淡々と故郷を撮っておきたいと思った。
ファインダー越に見える町並みは、紛れも無く、僕の故郷である。